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金融商品化する京都クレジット(排出権信託商品)
これまで、国内における京都クレジットの取引は、エネルギー多消費企業による数百万トンレベルの大口取引が主流であった。エネルギー多消費企業が京都クレジットを購入する理由は、経団連の自主行動計画などにより、社会的にコミットしている自主削減目標を達成するために、京都クレジットの活用を余儀なくされているためであり、電力会社がその典型的な例と言える。ところが、京都議定書第一約束期間である2008年に入り、エネルギー多消費企業以外での京都クレジットの購入が急速に増加してきている。その背景には、金融機関による京都クレジットの小口購入を可能とする金融商品の開発が大きな要因としてある。
信託銀行の提供する、「排出権信託商品」は、京都クレジットを千トン単位において、購入が可能とするものである。排出権信託商品の登場により、これまで、数十万〜数百万トンレベルでしか取引できなかった京都クレジットが、千トン単位で購入することが出来るようになり、年間のCO2排出量が数万トンレベルの企業においても、京都クレジットの購入による排出量削減が、より身近な選択肢として位置付けられることとなった。「排出権信託商品」は、京都クレジットの購入から管理までを、一元的に信託銀行が面倒を見てくれるものであり、京都クレジットの購入契約締結や、政府の国別登録簿への口座開設などの事務手続きの必要が一切ない。京都クレジット購入者は、信託銀行に対し、京都クレジット購入代金に加え、購入量に応じた一定の「信託報酬」を支払うことにより購入から償却までの一切の業務を信託銀行に任せることが出来る。(下図参照)
金融商品化する京都クレジット(排出権デリバティブ商品)
京都クレジットの大量購入を検討する場合において、将来の国内制度やポスト京都の枠組みの行方が不鮮明であること、さらには価格高騰の可能性があることなどが、その決断を非常に難しくしている。こうした状況において、将来の購入価格と購入権利をプレミアの支払いにより獲得することが出来る「排出権デリバティブ商品」が外資系証券会社などから出されている。こうした商品の活用により、購入コストを確定した上で、購入判断を将来の周辺環境の変化に応じて下すという柔軟な対応を可能とする。(下図参照)
京都クレジットを活用した戦略商品の開発(カーボンオフセット)
京都クレジットの購入が小口にて可能となったことにより、購入者側においても、京都クレジットを活用した戦略商品開発が進められている。特に、最終消費者に直接商品を提供し、CO2排出量が比較的少ない流通業や、サービス業において、「カーボンオフセット」を謳った商品・サービスの提供が盛んに始まっている。カーボンオフセットには、以下に示すとおり、京都クレジットの購入費用を消費者が負担するスキームと、企業側が負担するスキームとに大きく分類される。
(1)京都クレジットの購入費用を消費者が負担するスキーム
消費者が商品やサービスの提供を受ける際に、一定額を商品・サービス代金に寄付金を上乗せして支払い、それを受領した企業が、消費者に成り代わって京都クレジットの購入を行い、償却するもの。(下図参照)
(2)京都クレジットの購入費用を企業側が負担するスキーム
京都クレジットの購入費用は、企業が負担し、償却するもの。工場や店舗におけるCO2排出量のオフセットに充当し、自らのCO2排出量削減やPRに活用する。消費者に対して提供する商品やサービス価格への転嫁は行わない。(下図参照)
CO2排出量が比較的少ない流通業やサービス業においては、京都クレジット購入コストを、自社製品の広告宣伝費用と位置付けることにより、経済的に温暖化関連戦略商品開発が実現できるため、今後、様々なオフセット商品やサービスが提供されることが予測される。さらに、こうしたカーボンオフセット商品やサービスが市場へ供給されることにより、消費者の商品選択に大きな影響を及ぼすことが明らかになっていけば、カーボンオフセットは製造業や輸送業へと波及していくことも十分に考えられるシナリオである。リスクマネジメントという観点だけでは、京都クレジットの購入に躊躇していた企業も、環境保全という側面ではなく、消費者選択の要求に応えるためのマーケティングという視点から、京都クレジットの活用を検討せざるを得ない状況へと社会情勢は変化しつつあるのである。