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2008年03月06日  環境ビジネス最前線


古紙不足に揺れる製紙業界の動向  1/3

(NTTデータ経営研究所  社会・環境戦略コンサルティング本部
シニアマネージャー  林 孝昌)
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<概要>

  「古紙配合率偽装」に係る昨今の報道は、リサイクル全体に対する消費者の信頼を失墜させる事態を引き起こした。業界全体を巻き込んだ不祥事の背後には、古紙需要の逼迫並びに古紙価格の高騰という構造的な要因が存在する。その構造を読み解くキーワードこそ、他ならぬ中国である。

  1. 中国の古紙需要拡大がもたらす国内古紙の逼迫
  2. 中国市場への進出と環境技術移転
  3. 中国国内古紙回収率の向上を支援せよ
<関連キーワード>
  古紙配合率偽装、南通プロジェクト、グリーン購入法、
  古紙輸出関税制度、中国、トレーサビリティ
<企業>
  日本製紙、王子製紙、北越製紙

1.中国の古紙需要拡大がもたらす国内古紙の逼迫

  昨年11月、ある国会議員が「議員立法で古紙輸出関税制度を設けるべき」との記者会見を行った。中国向け古紙輸出の拡大が古紙価格を押し上げ、原料古紙の需給が逼迫している事態を踏まえてのことである。曰く、「製紙メーカー、古紙業者、需要家、消費者の利益を最大化し、わが国経済の発展、国民生活の向上に最も資する対策を早急に採ることが必要」とのこと。そもそもわが国に輸出関税は存在せず、万が一にも実現すれば自由貿易を国是とせざる得ない資源矮小国である本邦初の愚行となろう。ただし、輸出に歯止めをかけたいという関係者の想いは切実であり、十分に理解できる。

図1  古紙の国際取引の概要(2001年)、(2005年)
図1
(出典:古紙ハンドブック2006、平成19年3月、財団法人古紙再生促進センター)

  図1が示す通り、中国の急速な経済発展に伴う原料需要の拡大に伴い、世界中の古紙の一極集中が進行している。我が国から中国への古紙輸出量は、2001年〜2005年の4年間で約452%増加しており、その後も拡大の一途をたどっている。「新聞」「雑誌」「段ボール」等の代表的な古紙の国内価格は過去5年でも5割〜10割程度上昇しており、それでも輸出価格には追いついていないと言われる。
  他の多くの品目とは異なり、紙リサイクルは平安時代から行われてきた歴史があり、資源の有効利用云々以前の純粋な経済活動として成立してきた。わが国独自の「ちり紙交換」や「集団回収」という古紙回収システムが発展してきた中、グリーン購入法の成立が更なる追い風となり、古紙はリサイクルの優等生としての位置付けを確立してきたのである。

図2  古紙利用率の算出式
図2
(出典:古紙ハンドブック2006、平成19年3月、財団法人古紙再生促進センター)

  再生紙等古紙を利用した製品に対する需要が右肩上がりで上昇する中、2006年の実績で古紙回収率は既に72%を超えており、使い捨て製品にも廻される紙の特性を踏まえるとほぼ限界のレベルにある。こうした中、図2に示した算出式からなる古紙利用率に係る2006年の実績は60.6%であり、中国向け輸出量の拡大は分母・分子双方から同量を差し引くことになるため、一時は確実と見られた資源有効利用促進法に定められた2010年の目標である62%の達成すら危ぶまれる可能性さえある。特に繊維が長く、原料としての利用価値が高い新聞紙の不足は、政府調達における定番品目である印刷用紙等の原料不足にも直結する。
  以上のとおり、中国における古紙需要拡大がもたらした国内古紙の逼迫は、日本製紙の社長を辞任にまで追い込んだ古紙配合率偽装の遠因にさえなっている。
  製紙メーカーをとりまく事業環境は厳しい。世界市場での一定シェア確保を目指すのは、グローバル競争に晒される素材系装置産業にとっては必然であり、一昨年にメディアを賑わせた王子製紙による北越製紙の敵対的買収の仕掛けもその中での出来事と位置付けられる。王子製紙が目指したのは東アジアにおける印刷/情報用紙事業の競争力強化であり、具体的なターゲットは中国市場であった。国内の紙・板紙市場は既に飽和状態にあり、更なる成長を目指す上では海外進出を避けて通ることは出来ない。
  こうした中、王子製紙は2006年7月に中国政府の認可を取得し、中国江蘇省南通市に、日系初の製紙工場を設立することが決まっている。王子製紙が90%出資した江蘇王子制紙有限公司が、「高級紙80万t/年」と「クラフトパルプ70万t/年」の生産・販売を行うこととなっており、2010年から施設が稼動となる見込みである。しかしながら日系メーカーによる中国市場への進出において、どこまでの勝算が見込めるのであろうか?

<引用文献>

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