<概要>
化学業界を襲う国内外の化学物質規制の荒波を逆手にとり、製品の市場シェアの増加、あるいは寡占化を狙う化学企業の最新動向を、「環境配慮型製品」の事例をもとに探っていく。
- 化学業界を襲う化学物質規制の荒波
- 製造過程における環境配慮型技術の開発
- 環境配慮型製品の開発
<関連キーワード>
REACH規則、環境配慮型製品、化審法
<企業>
東レ、旭化成、信越化学工業、日本食品
三井化学、ADEKA、大日本インキ化学工業
欧州から、ELV指令やWEEE/RoHS指令、REACH規則などの化学物質規制の荒波が次々と押し寄せている。国内においても改正大気汚染防止法(VOC(揮発性有機化合物)規制)の施行をはじめ、化学物質排出把握管理促進法(化管法)及び化学物質審査規制法(化審法)の見直し議論が始まっている。化審法については、見直し時期となっている2009年に向け、厚生科学審議会・産業構造審議会・中央環境審議会の合同会合が1月31日に開催されており、化審法見直しに係る審議の趣旨や化学物質管理に係る国際動向について議論された。(※REACH規則の動向については2008年1月9日付けのトレンドウォッチ「EUの新化学品規則(REACH)に係る最新動向」を参照されたい)
化学業界は、上述した国内外における化学物質関連法規制に最も大きな影響を受けている(振り回されている)業界だ。最近の化学業界は、中国などの新興国の成長の恩恵を受け業績が好調な企業が多いものの、化学物質規制の強化に加え、原油高による製造コストの上昇という問題もあり、頭を悩ませる要素は多い。
化学企業は法規制が厳しくなる毎に、基準を満たすために多大な労力及び費用を費やしてきた。その労力と費用は、「法規制を遵守し、既存製品の販売継続を死守する」ための投資としての位置付けが大きく、新規製品を市場に送り出すための費用以外は、企業の収益向上に貢献する労力/費用として考えられることはほとんどなかったと言えるのではないか。
しかしながら、最近は風向きが大きく変わっている。自動車業界における「マスキー法」が自動車業界のグローバルな勢力図を大きく変えるトリガーになったことと同様に、WEEE/RoHS指令やREACH規則が、化学業界のグローバルな勢力図を大きく変えるトリガーになりつつある。特にREACH規則は、企業の対応如何では企業自身の死活問題にも発展しかねない制度であり、オセロゲームではないが、これまでの市場シェアを全て失う可能性も大いにありうる。
また、行政サイドが単に規制だけを推し進めるのではなく、グリーン購入法やトップランナー方式の導入、低排出ガス車認定制度などのインセンティブを付与させる制度との両輪により環境保全を推進していることにより、化学企業が規制の遵守や規制値を上回る数値を達成するための自主的な取り組み、さらには規制に抵触しない製品の開発を進めるケースが見受けられるようになりつつある。そうした活動を進めている企業は、主に以下2つの項目に関して積極的に取り組んでいる。
(1)製造過程における環境配慮型技術の開発
(2)環境配慮型製品の開発
(1)、(2)双方に言えることは、有害物質の削減(製造時および使用時)に加え、製品の品質向上、コスト競争力の強化を含めた「3点セット」の提供による市場シェアの増加/寡占化を目指しているということだ。その取り組みは「企業ブランド」の向上にも寄与している。なお、(1)に関しては、生産拠点(工場)周辺の住民との良好な関係を維持し、工場の安定的/継続的な稼動を行うことにも寄与する。
ちなみに「環境配慮型製品」とは環境に配慮した製品(素材を含む)の総称であり、省エネや製造時/使用時のCO2削減、有害物質の削減など、どれか1つでも実現できるものは該当すると考えられ、広義で捉えられている。
本稿では、上記2つの開発に取り組む企業の最新動向について、「有害物質関連(有害物質の削減)」にスポットライトを当てて伝えることとする。
<引用文献>